905 製造物責任法


(1)法の概略
@法律第85号 製造物責任法、1995年 ( 平成 7 年 ) 7 月 1 日施行、6 条のみ。

A製品が原因で発生した被害に対しては、メーカ、販売者等に損害賠償責任がある。
PL 法と略されるが、Product Liability の略で、製造物責任 と言う意味



(2)制定の背景
@従来も現在も損害賠償責任の法律はあるのだが、被害者がメーカなどの過失を立証しなければならない。
  民法 709条 不法行為責任
  民法 415条 債務不履行責任
  民法 570条 瑕疵担保責任

しかし個人がメーカの過失を立証することは、事実上困難で、泣き寝入りするしかなかった。

A1963年、米国で被害者の救済を目的に、厳格責任思想 の判例がだされ、1985年、 EU も この方式を採用し世界に広まっていった。
厳格責任とは、製造者は、製品に、人に損害を与える欠陥があることが立証されたときは責任を負うというもの。
つまり製造者等の過失を立証しなくてよくなった。



(3)内容
@対象となる 「 製造物 」 とは、「 製造又は加工された動産 」 としている。

Aだれが責任を負うのか?
「 それを業として製造、加工又は輸入した者 」、「 その製造者として、氏名、商号、商標その他の表示をした者又はそのように誤認させるような表示をした者 」

B責任範囲は、製品の欠陥が原因で起きた人身事故、物損事故が対象で精神的苦痛 ( 慰謝料 )、経済的損失 ( 休業補償など ) も含まれる。

C被害者は、3つの要件を証明すれば賠償責任を製造者等に問うことができる。
  1.製品に欠陥があった
  2.被害者に損害が発生した
  3.欠陥と損害に因果関係がある
おもちゃが発火し、子供がヤケドしたでよい。

D3 つの欠陥が定義されており、そのうち 1個でもあればよい。
  1.設計上の欠陥
  2.製造上の欠陥 ( 据付も含まれる )
  3.指示、警告上の欠陥 ( 説明書や本体に注意が書いていない )

E納入後 10 年間 は責任がある。( 10年過ぎたら従来の民法で請求するが、この場合、過失の立証が必要。これは 20 年 )
20 年すぎたら、どの法も使えず訴えることはできない。

F施行日の 1995 年( 平成 7 年 ) 7 月 1 日以降に納入した製品が対象である。
 
G製品の事故により、その製品だけが破損したときは適用されない。
このような場合、多くは製品の提供だけで済み、法を持ち出すまでもないこととされている。

H当時の技術水準では危険が予測できなかった場合、責任はない。( 開発危険の抗弁 ) ・・・ いずれこの条文は外される。

I使用や保守方法に問題があっても、合理的に予見できる場合は、責任がある。

J据付 ( 修理 )業者のミスの場合でも、据付 ( 修理 )マニュアル等で指示が適切にされていなければ責任がある。

K国の安全基準等を満足していても、最低の基準と見なされており、免責にはならない。

L客の要求により、安全装置を外したとき、免責されるためには、事故責任を客が負う旨の約定書が必要 → 事実上は困難である。

M部品の欠陥の場合、部品メーカーに対してその責任の割合に応じて求償できる。



(4)おもちゃ修理の責任
@WEB の法律事務所の HP などでは、( おもちゃの )修理は、この法の適用外と解釈しているようだが、実判例がないので何とも言えない。
修理といっても定義があいまいで、ケースバイケースとなるだろう。

AIC がこわれたので、別 IC で改造したり、追加工したとなると当然メーカは補償しないので、修理者の責任となるだろう。

B法では、修理費が有償、無償は関係なく、ボランティアというのも関係ない。

Cおもちゃ病院で、「 修理後の保証はできません 」 としているところがある。
語句としては、保障、補償 もあり、言う側の意味合いと聞く側の受け取る意味合いが一致しているとは言えない。
いくら書いてあっても、了解を得たといっても、この約束は、法的には通用しないのではないか?

D部品交換だけで、旧状態へ復帰させただけといっても純正部品でない場合がほとんどであり、ヒューズを短絡したり、設計意図の誤解や技能不足があれば当然責を負わねばならないだろう。

E「 防犯ブザーは、保証ができないので修理しない 」 というのは、逆に言えば、修理するほかのおもちゃは保証すると言ってるに等しいのだから矛盾を感じる。
防犯ブザーは、使用上の注意が守られないことが多く、メーカでさえ保証しかねる代物である。
メーカですら保証できないものであるからこそ、また将来を担う子供を守るものであり、積極的に修理し、登校・下校時の動作点検やダブル装備の 2 重化など正しい使い方を教えてやるのが老人にもできることであると思う。精一杯やってもだめならいたし方ない。

F浮き輪や AC 100 V 使用品については、「 保証できないので修理しません 」 と言うより、「 専門知識、技術、資格がないため修理できません 」 としたほうがいいのではないか?
前職などで、これがある人は、やればいい。

G弾の出るおもちゃ、危険なおもちゃ ・・ も、自分たちの子供のころは遊んで、その過程で怒られ、痛い目にも合って、危険を体得していったのではなかったか?
今の子は鉛筆をナイフで削れないというし、はさみの渡し方、傘 (長いもの )の持ち方を知らない子がいる。
親が子に使わせるのを承知でいるのなら、修理を引き受け、危険なところやナイフの持ち方などを教えてやるのがいいのではないか?

H逃げることばかり考えないで、修理者が責任を負う気でいないと、「 健全な心を育ぐくまねばならないのはどっち? 」 と笑われてしまう。
今は好意的に扱われているようだが、一旦事故がおこり 《 903-(3)安全原則にもあるように事故は必ず起こる 》、対応を誤ると、マスコミは豹変する。
特に、○○市おもちゃ病院など冠をいただいているところは、マスコミ沙汰になれば、市側が閉鎖してしまうかも知れない。
おもちゃドクターなら誰しも感じていることだろう。

責任を取るといっても、祈ることと、お金で補償するしかないのだから、おもちゃドクターするなら保険に加入して備えておきましょう。

Iボランテイア保険
全国どこの市町村でも社会福祉協議会のボランティアセンターで、団体に属さない個人でも加入できる。
年間 500 円程度
補償は、地域によって多少違うかもだが、3 つセットになっている。
◎傷害給付 ( 事故による本人の死亡、後遺症、入院、手術、通院 ) ・・・ 一般生保並み
◎賠償責任給付 ( 事故による被害者の身体や財物への損害 ) ・・・ 身体と財物合わせて 5 億円
◎見舞金 ( 傷害給付対象にならない場合 ) ・・・ 活動中本人の病気による死亡 ・・・ 10 万円

これでも心配なら、各損保に個人賠償責任保険がある。


J法とは関係ないが、修理中に壊した場合、どうするか?
+−の逆接続など自分のミスがはっきりしているときは、部品代当方負担で、内容を説明しておくことにしている。
患者さんのなかには、「 修理途中で部品がこわれたりするのは、折込済みだから、お支払いします。」 と言ってくださる方もおられるが、最初からそうしているので変えられない。
でも、黙って同じおもちゃを買い、中の基板を交換したことや IC 不良にしたこともあるなぁ。










---- 2014.02.06 ----