902 安全規格


(1)法律や規格の位置付け
@1785年、イギリスのワットが蒸気機関を発明し、産業革命が起こり 1950年ごろにイギリスが絶頂になるが、その後、高福祉政策がたたり、凋落していった。

A1972年、イギリスの労働安全改革のため、ローベンス報告がなされ、法規制より事業者の自主規制とするべきという方針が示され、これが世界に受け入れられ現在に至っている。
技術の進歩に法律が追いつかず、作ってもすぐ陳腐化するので、法や規格で規制する方法を断念 し、そのかわりに基本概念だけを決め、細かいところは一番よく知っている 事業者の良心に委ねる ことにしている。

B1967年に EC ( 欧州共同体 ) のちに EU ( 欧州連合 ) ができており、このローベンス報告に沿って、加盟国で共通使用する EN 基本規格が作られていった。


(2)国際規格
@技術進歩やグローバル化が進めば、世界共通の規格が求められるのは当然のことである。
この目的で以下の機関がかなり前に設立されている。
1906年、IEC ( International Electrotechnical Commission ) ・・・ 電気の国際工業標準・規格を作成
1947年、ISO ( International Organization for Standardization ) ・・・ 機械 ( 電気以外のもの ) の国際工業標準・規格を作成

A1995年、規格があっても守られなければ意味がないので、WTO ( 世界貿易機関 ) が TBT 協定 ( Agreement on Technical Barriers to Trade ) を提案した。
工業製品等の各国の規格などが貿易障害とならないよう、各国の国家規格を国際規格と一致させる ( 整合する、 ハーモナイズする ) という協定で、各国が批准し、1994年、日本も批准した。

したがって 日本工業規格のJIS は順次 ISO や IEC 規格と同文にされつつある。
これができて ISO と IECの存在価値が急上昇している。

B開発途上国も、自国で一から規格を作るようなムダはせず、ISO ・ IEC 規格を自国の規格として採用しており、以前では信用された JIS が通用しなくなってきている。
もともと JIS は構造や寸法などであり、安全概念を規定する JIS はほとんどなかった。

CEU ( 欧州連合 ) の EN (機械 )・CEN (電気 )規格と ISO ・ IEC 規格の関係
EU 規格もローカル規格なので国際規格に整合せねばならないが、何の抵抗もなく移行している。

国際規格の ISO ・ IEC 規格は、EU の EN 規格がベースになっており、ほぼ同等の内容で EU 規格がそのまま国際規格に格上げになっている。
ISO ・ IEC 規格検討メンバーと EU 規格作成メンバーが欧米中心でしかもほぼ同じメンバーであり、当然と言えるが、アジア他に不都合な面がでてくる。
しかし、日本の技術水準であればたいした困難はない。

日本も経済産業省が ISO ・ IEC 規格検討メンバーに日本人を参画させているが、お義理に近く、言葉の問題やメーカ技術者の手弁当では、リードすることはできない。
理念を作ることは日本の苦手なので、あっさり彼らに任せ、得意な技術応用面で勝負すればいいと思ってるみたい。

DCE マーク
EU 圏内では、EU 規格に適合しているという CE マークがないと販売できない。
適合証明は、第三者機関に認定してもらうか、メーカの自己宣言 である。

自己宣言ゆえ、メーカは、いつでも宣言根拠を理路整然とテスト記録などの証拠をもって証明できなければならない。
米国では UL マーク、カナダでは CSA マーク ・・・ などの表示要求があるが、CE マーク表示があれば世界中どこでも通用するようである。


(3)日本の問題点
@TBT 協定では、強制するかどうかは各国に任されており、批准国の多くは ISO ・IEC の整合規格を強制規格としているのに対し、日本は整合して作った JIS を任意規格扱いにしており、守らなくてもよいことになっている。もともと JIS は任意規格。

AJIS は、経済産業省管轄であるが、整合した JIS を作るだけである。
番号つけ方も ISO ・ IEC と同じ番号にすればよいのに、まったく別にしており、採番する経産省関係者や規格を参照する多くの人に番号一覧表を作らせたりのムダな時間を使わせている。
ISO 12100 の整合規格を 旧枠内の JIS B 9700 などとせず、新枠にし、JISI 12100 などとすればよかったと思う。
全ての ISO ・ IEC規格 がJIS化されたときのムダは考えるだけでもぞっとする。
いまから変更してもいいのではないかな?

B安全 ( 労働安全衛生関係規定・ボイラ、クレーンなどの規格 ) は、厚生労働省の管轄であるが、整合 JIS を法で強制にはせず、整合 JIS と同じものを厚生労働省版として作り、使用を推奨している状況である。
同じ内容で少し違うものが 2 つもできてしまったし、厚生労働省版に適合していると言っても世界では 「それは何ですか?」 で通用せず、いちいち 12100 準拠と説明しなければならない。

C日本のメーカは、世界が相手なので、CEマークや ISO、IEC に準拠せざるを得ず、世界から強制されているのが現状である。

D産地偽装、メニュー偽装、データ捏造などが後を絶たないのは、事業者の自主規制という概念が根付いていないからと思われる。
省の再編成と小さいときからの教育が必要である。

E法の不備をかいくぐって、明らかに不正と思われても、取り締まる法律がないというのに対応するには、「良心法 」 を作り、汎用的に取り締まれる法を作ればいいと思う。
良心に反するかの判定は、陪審員制度ですればいい。
「 してはいけないとどこにも書いてない 」 には 「 あなたの心の中に書いてあるでしょう 」 でいけるのでは?


(3)産業機械の安全規格
おもちゃも基本部分は産業機械と同じとみなし、産業機械の基本概念を押さえておくのがよいだろう。
産業機械の ISO ・ IEC では、 概念の A 規格、各機械で共通に使用できる B 規格、個別機械専用の C 規格のABC ピラミッド構造になっている。

@最上位の A 規格は、1個で ISO 12100 : 2010 : Safety of machinery - General principles for design - Risk assessment and risk reduction
設計のための一般原則 - リスクアセスメント及びリスク低減 ・・・ 整合規格は、JIS B 9700 : 2013
これの詳細は 、903 リスクアセスメント でまとめておく。

A IEC の A 規格はなく、 B 規格のうち基本となるのは、IEC 60204 - 1 : 2005 Safety of machinery - Electrical equipment of machines - Part 1 General requirments
機械類の安全性 - 機械の電気装置 - 第 1 部 - 一般要求事項 ・・・ 整合規格 は、JIS B 9960 - 1 : 2008
概念的な部分は A 規格の ISO 12100 に含まれ、日本の電気設備技術基準と同等と思えるので、詳細には触れない。


これら規格の保護対象は、15歳以上である。


(4)おもちゃの安全規格
おもちゃの規格としては、14歳以下を対象とした下記がある。
無料閲覧できないので、リストアップしかできない。

ISO 8124 - 1 : Safety of toys - Part 1 : Safety aspects related to mechanical and physical properties : 玩具の安全性 : 第 1 部 : 機械的及び物理的特性
ISO 8124 - 2 : Part 2 : Flammability : 第 2 部 : 可燃性
ISO 8124 - 3 : Part 3 : Migration of certain elements : 第 3 部 : 特定元素の移動
ISO 8124 - 4 : Part 4 : Swings, slides and similar activity toys for indoor and outdoor family domestic use : 第 4 部 : 屋内及び屋外で使用する家庭用のぶらんこ、すべり台及び類似の動きをする玩具

IEC 62115 : Electric toys. Safety : 電動玩具安全基準


EN 71 -   1 : Safety of toys : Mechanical and physical properties : 玩具の安全性 第 1部 : 機械的及び物理的特性
EN 71 -   2 : Flammability : 第 2 部 :可燃性
EN 71 -   3 : Migration of certain elements : 第 3 部 : 特定元素の移動
EN 71 -   4 : Experimental sets for chemistry and related activities : 第 4 部 : 化学実験器具及び関連製品
EN 71 -   5 : Chemical toys (sets) other than experimental sets : 第 5 部 : 実験器具以外の化学玩具
EN 71 -   6 : Graphical symbols for age warning labeling : 第 6 部 : 年齢警告表示の為の図形記号
EN 71 -   7 : Finger paints. Requirements and test methods : 第 7 部 : フィンガーペイント - 要求事項及び試験方法
EN 71 -   8 : Activity toys for domestic use 第 8 部 : ぶらんこ、すべり台及び類似の玩具
EN 71 -   9 : Organic chemical compounds. Requirements : 第 9 部 : 有機化合物 − 要求事項
EN 71 - 10 : Organic chemical compounds. Sample preparation and extraction : 第 10 部 : 有機化合物 − 試料作成及び抽出
EN 71 - 11 : Organic chemical compounds. Methods of analysis : 第 11 部 : 有機化合物 −分析方法
EN 71 - 12 : N - Nitrosamines and N - nitrosatable substances : 第 12 部 : N - ニトロソアミン及びN - ニトロソ化する物質
EN 71 - 13 : Olfactory board games, gustative board games, cosmetic kits and gustative kits : 第 13 部 : 嗅覚ボードゲーム、味覚ボードゲーム、化粧キット、味覚キット

EN 62115 : Electric toys. Safety : 電動玩具安全基準


ASTM ( American Society for Testing and Materials ) F - 963 第 1部 : 物理 ・機械性能
ASTM F 963 : 第 2 部 : 耐火性能
ASTM F 963 : 第 3 部 : 有害物質の試験


日本玩具協会 ST 2012 - 1 第 1 部 : 物理 ・ 機械性能
日本玩具協会 ST 2012 - 2 第 2 部 : 可燃性
日本玩具協会 ST 2012 - 3 第 3 部 : 化学性能
ST 2012 は、ISO 8124 に準拠している。 認定して ST マーク可 ( 賠償保険付 )

その他の関連法
・食品衛生法 ・・・ 塗料、染料、化学物質
・家庭用製品有害物質制御法
・電器用品安全法 ・・・電源、トランスなど PSE マーク 義務
・電波法 ・・・ トランシーバ、ラジコン周波数、強度
・消費生活用製品安全法 ・・・ 乳幼児製品は認定を受ければ SG マーク可、乳幼児用ベッドなどについては認定後 PSCマーク貼付が義務 ( 賠償保険付 )

各関係団体ごとに場当たり的に個性を発揮しているみたいで、おもちゃメーカも大変ですな。



(5)あれこれ
@EN 規格が先行し、順次 ISO 化されつつあるようだ。

AISO 8124 の整合 JIS は作られないみたいで、玩具協会の ST規格 を整合規格としていくのかな?
JIS 化してもらえば無料で閲覧できるのだから、ST も無料公開してほしいものである。

Bマークが正しくつけられているとすれば、ST マークより CE マーク付きがより安全である。

Cおもちゃメーカは、産業用の ISO ・ IEC を理解した上で、子供専用の規格を参照するのがいいだろう。
ISO ・ IEC の基礎概念がわかっておれば、 EN 71 の内容は子供用の制限値を除いてほとんどカバーできると思われる?
EN 71 に適合していると謳っているのが多いが、CE マークのためにはしょうがないね。

D化学物質関連の許容値などについては、概念では決められないので参照するしかない。

Eおもちゃは、日本国内ではほとんどが電気工作物に該当しないので ( 電圧 30 V 未満の電気設備で、電圧 30 V 以上の電気設備と接続されないものは除外 )、電気関係では、なにをしてもいいのだが、以下の保護関係の内容は知っておかなければならないだろう。
☆電気設備技術基準とその解説











---- 2014.02.04 ----